アンジロー
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20160920
南海路とスペイン太平洋航路が交差する話、
を、誰もしていないのは変だ、海部の歴史が歪曲だらけだ、
という所までは、人に話していたのだけれど、
あれから進んだのは、アンジローとザビエルのことだった。
殺人を犯したアンジローが、ザビエルに会って回心し、
ザビエルと一緒に日本にやってきた、
通商の品物についての証言が、図星だった、
という話は、「教科書がらみ」で知っていた有名な話?だと、
私は思うのだが、南海路上の薩摩の人物ということが気になる人だった。
それでアンジローのことがわかる本はないかと調べたら、
アンジローそのものの本、岸野久『ザビエルの同伴者アンジロー』
があるのがわかり、
読んでみて、話がうますぎるのではないか、と思った。
アンジローそのものの本があった、というのも、話がうますぎるように思ったし、
この本の主題は、アンジローのザビエルとの出会いとキリスト教への回心
にあるのだけれど、
アンジローという人物が、「でき過ぎだろう」という印象だったこと、
ザビエルにも薩摩の領民にも、「歓迎されすぎだろう」という印象だったこと、
ザビエルのモルッカ諸島布教の期間が書いてあり(p65)
それがビリャロボス隊のモルッカ滞在期間に重なること、
ザビエルとビリャロボス隊の関係を調べると、
ザビエルの書簡に、ザビエル自身の言葉として、ビリャロボス隊に会った、
と書いてあるのがわかったからだ。
そしてザビエル書簡の全訳という本もあったのである。
岸野先生は、「アンジローのキリスト教への回心」ということに、
重点を置かなければならない、と思っておられるようだ。
だからアンジローが罪を犯した人間、その罪は殺人である、
という話は、外せない枕になっている。
ちょっと考えたらおかしいと思いそうなことなのに、
そうはならないのだ。
何と言っても、ローマ・スペイン・ポルトガルの、現地・現地語・原文書を渉猟して書かれた、
実に貴重な研究書である。
原文書を一生懸命、筆写して翻訳して書いた、研究者の心情を考えれば、
私のような門外漢に、横から、
太平洋航路開拓のための情報提供に、日本から出かけて行って関与した人でしょう、
なんて、あっさり言われたら、ガックリくるのではないか、
と思われるほどの、学究の仕事である。だからこそありがたいのではあるが。
それは、キリシタン史としてであるからこそ、史料の閲覧や収集ができたのであって、
現地の人々の思惑に逆らうことのないテーマだったからこそ、書けたのである。
私のように、太平洋航路開拓の経緯を調べたい、などと言ったら、
たちまち門戸は閉ざされ、全く調べようのない状態が続いただろう。
ローマ教会は、多分、私のような視点で見られることを、非常に警戒しているだろう。
要するに、私には、たくさんの対立集団があるのである。
マルクス主義者、歴史学方法論者、哲学者、経済学方法論者、
中国政府、アメリカ政府、旧戦勝国、
皇室擁護団体、
それに付け加えて、ローマ教会、南海路関係者、
旧阿波藩関係者も、もちろんそのようだ。
徐々に気持ちがほぐれて、考え方や姿勢が変わる、なんてことが、
あるだろうか。
一つだけでも、突破口がないかなあ、と思っていたけれど、
よく考えたら、対立するのはローマ教会、修道会、こういう所なのだ。
おもしろい話、と思って展開してみたけれど、これも難しそうだ。